2026.10.29
「Green Destinations Top 100 Stories 2026」に、越前鯖江地域の取り組みが選出

「Green Destinations Top 100 Stories 2026」に、越前鯖江地域の取り組みが選出

持続可能な観光の国際認証団体グリーン・デスティネーションズが主催する「Green Destinations Top 100 Stories 2026」において、福井県の越前鯖江地域(鯖江市・越前市・越前町)の取り組みが選出されました。

「Green Destinations Top 100 Stories」は、オランダに本部を置くグリーン・デスティネーションズが実施する、持続可能な観光の優良事例を選出し、国際的に共有・表彰するプログラム。世界中の各地域が提出する「グッドプラクティスストーリー」をもとに、地域の課題に対する取り組みや成果を評価し、優れた実践を行う100の事例を選出しています。

今回、越前鯖江地域の事業者や住民、移住者、行政などがともに進めてきた観光地域づくりが、「People & Community(人々とコミュニティ)」のカテゴリーで評価されました。

選出されたストーリーは、「Reconnecting People, Reinnovating a Craft Region」。越前鯖江地域で行われるオープンファクトリーイベント「RENEW」をきっかけとした、職人と来訪者の交流を通じた意識の変化や、移住・就業による担い手の増加、産業や行政区域を越えた連携など、ものづくりを支える人々とコミュニティの変化が、今回の選出につながっています。

■ 7つの地場産業が集積する、福井県・越前鯖江地域

越前鯖江地域は、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼といった伝統工芸品や、眼鏡・繊維といった7つの地場産業が半径約10km圏内に集積する、日本有数のものづくり産地です。素材や技術の異なる産地が近接し、それぞれのものづくりが影響を与え合いながら、地域の暮らしの中で受け継がれてきました。

そんな中、時代や生活様式の変化によりその産業構造が変化し、生産量・売上の減少や後継者不足に直面。また、消費者との接点を持つ機会が少ない職人らは、自らの仕事や技術の価値を実感する場面が限られ、誇りも失われつつありました。

■ 作り手と使い手をつなぐ「RENEW」から、「伝える場」としての地域全体の変革

越前鯖江は、ものづくりと暮らしが密接に結びついた地域です。まちを元気にするには、地域の産業が元気であることが欠かせない。その考えのもと、2015年に鯖江市河和田地区でオープンファクトリーイベント「RENEW」が始まりました。

工房や企業を一般に公開し、職人自身が来訪者と実際に言葉を交わしながら技術や製品を紹介。作り手と使い手が直接交流し、その価値を伝える場が生まれました。来訪者から寄せられる驚きや感想は、職人にとっても、自らの仕事や技術の価値を改めて実感するきっかけとなり、産地の空気や人々の意識が少しずつ変化しはじめました。

2017年には工房をひらく動きが周辺地域へ広がり、翌年からRENEW開催エリアを鯖江市・越前市・越前町の3市町へと拡大。この頃からOEM依存を脱却し、自社の商品開発を行う事業者が増加しました。RENEWの開催をきっかけとして、産地内に新設されたファクトリーショップや宿などの関連施設は49にものぼります。イベント会期以外にも、来訪者が職人から製品を購入できる場が拡充し、越前鯖江地域のものづくりをじっくり体感できる環境が整備されはじめています。

参加事業者21社・来場者約1,200名から始まったRENEWは、2025年には参加事業者122社・来場者数は延べ5.5万人まで増加。県内外から幅広い世代が参加する産地のサポーターチーム「あかまる隊」には約100名が参加し、職人らとともに活動しています。産地へ継続的な関心をもつ人々が増え、ものづくりを未来へつなぐ機運が高まりました。

現在は一般社団法人SOEとして、通年型の産業観光を軸とした、持続可能な観光地域づくりに取り組んでいます。地域の事業者と連携したツアーや体験プログラムの開発、国内外からの誘客促進、宿泊施設の運営などを行い、一年を通して産地を訪ねることができる環境を整えてきました。

■ 産地の担い手として、約70名が移住・就業へ

地域の変化は、 産地の担い手の広がりにも表れています。SOEでは、ものづくり企業に就職したい若者と後継者不足に悩む企業を繋げる、滞在型就職体験プログラム「産地のくらしごと」を実施。こうした活動やRENEWをきっかけに移住・就業した若者は約70名に上り、職人としてだけでなく、デザイナー、事業を支えるバックオフィス人材など、様々な角度から産地に関わる人々が増えました。県外からの移住者も多く、暮らしの基盤となるシェアハウスも8棟開設されています。

また、職人同士の交流も、工房や産業、行政区域の垣根を越えて広がっています。
越前和紙の伝統工芸士である瀧 英晃さんは、こうした変化について、
「越前鯖江地域で、通年でお客様に来ていただける環境づくりが着実に前に進んでいます。何より大きな収穫は、ものづくり仲間が圧倒的に増えたことです。」と話しています。

ものづくりに関心を持って訪れた人が、繰り返し産地に通い、仕事や暮らしの場として選ぶ。こうした関わりの広がりや循環が、地域のものづくりを支えています。

■ ローカルガイドと工房を巡り、産地に泊まる。通年で楽しめる越前鯖江の旅

SOEでは、2023年より通年型の産業観光を推進し、体験プログラムの開発やガイドと工房を巡るツアーを実施しています。産地を熟知したガイドがものづくりの技術や文化の背景を伝え、職人との対話をつなぐことで、旅行者がものづくりをより深く理解できる体験を提供。海外からの旅行者も増えており、ものづくりの現場を間近で見学し、職人との交流を楽しんでいます。受け入れにあたっては、職人が本業と両立できる企画設計をおこない、旅行者が職人から直接ものづくりを学べる体験と、工房が継続的に受け入れられる仕組みを整えています。

2025年秋には、越前市今立に越前和紙を体感する工芸宿「SUKU」、翌年秋には「SUKU hanare」を開業しました。産地を巡る拠点として、工房やショップ、飲食店の案内に加え、宿泊者限定の体験プログラムも実施。工房見学や買い物、ものづくり体験と宿泊を組み合わせ、産地の文化や暮らしを知る滞在を提案しています。

SOEは今後も、地域産業の継承、地域資源の循環、来訪者と地域住民の双方にとって価値のある持続可能な観光地域づくりを推進します。引き続き地域の関係者と連携し、産業、文化、自然環境、地域社会のつながりを大切にしながら、ものづくり地域を次世代へ継承できる仕組みづくりを進めてまいります。

 

■ 「Green Destinations Top 100 Stories 2026」について

持続可能な観光における優れた取り組みを発掘・評価・発信するための国際プログラムです。主催するGreen Destinationsは、オランダに本拠を置く国際的な非営利組織で、世界中の観光地が持続可能性を高めることを支援し、その成果を評価する制度を設けています。国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献する考え方で、観光が地域と地球にとってポジティブな力となることを目指しています。

Top 100 Storiesは、地域の優れた取り組みやそのノウハウを世界中へ共有することで、他の地域の新たな行動のきっかけとなり、「持続可能な観光」を広めるための取り組みです。

持続可能な観光を推進する世界中の地域から、特に優れた100の事例が「Top 100 Stories」として2014年より毎年選出されています。
https://www.greendestinations.org/top-100-competition/

 

photo:Tsutomu Ogino (TOMART:PhotoWorks)