スクール|越前鯖江デザイン経営スクール(令和7年度)
主催|越前鯖江デザイン経営スクール実行委員会
共催|鯖江市・越前市
運営|TSUGI LLC・一般社団法人SOE
実施期間|2025年8月〜2026年3月
「デザイン経営」を、産地に根付かせる
ものをつくる技術は高い。でも、その価値をどう届けるかが分からない——越前鯖江の産地事業者が長年抱えてきたその課題に、正面から向き合うプログラムとして「越前鯖江デザイン経営スクール」は2023年にスタート。SOEではスクールの運営を担当しました。デザイン経営とは、デザインの力を経営の中心に置き、自社の価値を言語化・可視化し、それを届ける仕組みをつくることです。大企業だけのものではなく、職人が営む小さな工房にこそ必要な考え方だとSOEは考えています。
2025年度は3年目。シンポジウム・価値づくりセミナー・クリエイティブキャンプ・デザイン経営フェスという4本柱で、これまでの学びを産地に還元する年になりました。
①デザイン経営シンポジウム

8月18日、福井ものづくりキャンパス(サンドーム福井内)にて、約80名が参加するシンポジウムを開催しました。
第1部の基調講演には、多摩美術大学教授で株式会社HAKUHODO DESIGN代表取締役社長の永井一史氏が登壇。パーパス(社会的存在価値)に基づく経営の重要性と、今後のデザイン経営の方向性についての示唆を得ました。
第2部はパネルディスカッション「デザイナーとの付き合い方」。TRUNK DESIGN INC.代表取締役の堀内康広氏と、清水紙工株式会社取締役の清水聡氏が登壇し、TSUGI代表で一般社団法人SOE副理事の新山直広がモデレーターを務めました。企業とデザイナーの協働関係をどう築くか、現場の事例を交えながら産地事業者と語り合う時間となりました。
②これからの価値づくりセミナー——全6回、実務者が語る経営の現場
経営・組織づくり・デザイン戦略・企画・販路・PRなど、事業開発に必要な要素を体系的に学ぶ連続セミナーを全6回開催しました。延べ130名以上が参加し、参加者の8割が事業者という実践志向の場になりました。
木村石鹸工業代表の木村祥一郎氏による「いい会社とは」に始まり、HackCamp代表の菊地愛氏による組織づくりと評価制度、ヤマチクCEO山崎彰悟氏によるデザイン経営の実践、Nue inc.代表の松倉早星氏による企画の作り方、そして玉川堂番頭の山田立氏による販路づくりとmimizu PRのライター中川奈保氏による価値の伝え方を扱う2回で締めくくられました。いずれも自身の事業を現場で動かしてきた実務者たちが、理論ではなく経験から語る場です。同じ会社から異なる部署のメンバーが参加する事例も複数見られ、テーマに合わせて組織内で学びを持ち寄る使い方も生まれています。
③越前鯖江クリエイティブキャンプ——2泊3日で、事業の種を形にする
11月22日〜24日の2泊3日、産地企業4社とクリエイター16名が合宿形式で向き合う「越前鯖江クリエイティブキャンプ」を開催しました。現地リサーチから課題整理、アイデア創発、プロトタイピングまでを短期集中で行い、産地企業の未来の事業の種を形にする実践型プログラムです。
今年の参加企業は、あたかや(越前漆器)・谷口眼鏡(眼鏡)・三崎タンス店(越前箪笥)・かせや味噌(食品)の4社。漆器、眼鏡、箪笥、食品と、産地の多様な業種が揃いました。
最終日には発表会を実施。各チームの提案はそれぞれの企業の課題に深く根ざしたものでした。あたかやチームは縄文から続く漆の赤と黒を「祈りの色」として位置づけた新ブランド「AKAKURO」を提案。谷口眼鏡チームは作り手全員を主役にした工房ツアーで産地ごとブランドのファンをつくる仕組みを提案しました。三崎タンス店チームは「護る技を、愛でる」をコンセプトにツーリズム・アップサイクル・新ブランドの3つの事業を提案し、火災による被害から再建途上にあるかせや味噌チームは、家族の絆を深める味噌づくりワークショップと独自製法を生かしたリブランディングを提案しました。
参加クリエイターの1/3は県外からの参加で、越前鯖江への移住を具体的に検討している方もいるなど、関係人口の創出という面でも手応えのある場になりました。
④越前鯖江デザイン経営フェス——3年間の締めくくりとして、新設

▶︎ イベントの詳細はこちらでご紹介しています
3月21日、3年間の集大成として新たに設けられた「デザイン経営フェス」を開催しました。
スペシャルトークには環境大善代表取締役の窪之内誠氏とKD主宰の鎌田順也氏が登壇し、「環境大善による、私たちのデザイン経営」をテーマに実践の軌跡を語りました。パネルディスカッションでは越前セラミカの石山享史氏と沢正眼鏡の澤田渉平氏が「会社、産地、その後どう変わった?」と題し、スクールを経て自社にどんな変化が生まれたかをリアルに話しました。参加者からは「リアリティがあり、多くの気づきをいただきました」という声が届きました。また、最終プログラムとして公開ラジオ収録「ふぉんふぉんラジオ スクールおつかれ!」も行われ、11年間の学びを笑いと振り返りで締めくくりました。
3年間で、産地に何が生まれたか
2023年に始まり3年間のスクールを通じた参加者は延べ713名。スクールをきっかけとした域内移住・就業者も生み、スクール後も継続して動くプロジェクトは11チームにのぼります。
クリエイティブキャンプに参加したあたかやチームはプロダクトのサンプルをデザイン経営フェスで展示し、現在はオンラインショップの改善と新プロダクト用サイトの作成を検討しています。参加者からは「1つの課題に3日間フルに向き合う貴重な時間をいただけた。自社や産地の強み弱みの再発見や新たな視点での考え方が生まれ、少し霧が晴れた気がしています」という言葉も届きました。
SOEが「産業観光を通じて、持続可能な地域をつくる」というビジョンを掲げるとき、観光だけでは産地は続きません。産地の事業者が自分たちの価値を正しく知り、それを届ける力を持つこと。デザイン経営スクールは、その力を産地に根付かせるための3年間です。