デザイン経営を学び、考えるイベント|越前鯖江デザイン経営フェス
主催|越前鯖江デザイン経営スクール実行委員会
共催|鯖江市・越前市
運営|TSUGI LLC・一般社団法人SOE
開催日|2026年3月21日(土)14:00〜18:20
会場|福井ものづくりキャンパス(福井県越前市)
来場者数|84名
3年間の問いを、はじめてフェスという形でひらく

「デザイン経営」という言葉は、大企業や有名ブランドのものだと思われがちです。越前鯖江の産地で3年間取り組んできたデザイン経営スクールが問い続けてきたのは、職人が営む工房や家族経営の事業者が、デザインの力をどう経営に活かすかということでした。
2026年3月21日、その3年間の集大成として「越前鯖江デザイン経営フェス」を開催しました。1月の悪天候による延期を経ての振替開催となりましたが、当日は約80名が来場し、熱気あふれる1日となりました。単なる成果発表に留まらず、これからの地域のあり方を共に描く場として企画したこのフェスは、スペシャルトーク・展示/ギャラリートーク・パネルディスカッション・公開ラジオ収録という4つのプログラムで構成されました。
会場となった福井ものづくりキャンパスには、スクールに参加した全12社のプロジェクト活動を振り返る展示も設けられ、3年間の軌跡を来場者と共有しました。
①スペシャルトーク「環境大善による、私たちのデザイン経営」
フェスの冒頭を飾ったのが、環境大善株式会社代表取締役の窪之内誠氏と、アートディレクターでKD主宰の鎌田順也氏によるスペシャルトークです。
環境大善は、天然成分100%のバイオ消臭液「きえ〜る」を生み出した企業。印象的だったのは、デザインが単なる「見た目」の話ではなく、経営の根幹に深く根を張っているという視点です。デザイナーが上流工程から入り、時には決算書を共に読み解きながら、今必要なのは「即効性のあるカンフル剤」なのか「じっくり効く漢方薬」なのかを判断していく。経営者である窪之内氏が、デザインの価値を誰よりも実感を持って語られる姿に、会場全体が引き込まれました。

また、デザインの力は売上だけでなく「採用」や「インナーブランディング」にも大きく寄与しているという話も。良いデザインが働くスタッフの誇りを生み、「ここで働きたい」という人を呼び寄せる。組織や人へのポジティブな影響について、多くの学びが共有されました。参加者からは「環境大善さんのお話はとても勉強になりました。多くの気づきをいただきました」という声も届いています。
②展示/ギャラリートーク「デザイン経営スクールの歩み」
会場のメインホールでは、3年間にわたってスクールと共に歩んできた全12プロジェクトの活動を一挙に展示しました。それぞれの企業が向き合ってきた課題、対話を重ねて生まれたアイデア、そして形になったプロダクトやサービスを各チームが紹介し、ブースを回る来場者が出展者と熱心に言葉を交わす姿が印象的でした。

あわせて展示した特許庁「みんなのデザイン経営」による概念解説や全国の事例も、自分たちの地域にどう「デザイン経営」を落とし込むかを考えるヒントになりました。共に歩んだ12チームは、2023年度が曽明漆器店/漆器久太郎・沢正眼鏡・小柳箪笥店・越前セラミカ、2024年度が高橋工芸・サカエマーク・中西木材・山伝製紙、2025年度があたかや・谷口眼鏡・かせや味噌・三崎タンス店です。この場所から生まれた小さな芽が、時間をかけて産地の大きな力に変わっていく。そんな手応えを感じる展示となりました。
③パネルディスカッション「会社、産地、その後どう変わった?」
スクールの商品開発プロジェクトに参加した事業者たちが、その後の変化をリアルに語るパネルディスカッションも開催しました。登壇したのは、越前セラミカ代表取締役の石山享史氏と、沢正眼鏡株式会社代表取締役の澤田渉平氏。TSUGI LLC.代表で一般社団法人SOE副理事の新山直広がファシリテーターを務めました。
スクールを経て会社はどう変わったか、産地にどんな影響が生まれたか。数字や成果だけでなく、思考の変化や社内の雰囲気の変化まで含めたリアルな言葉が、来場した他の事業者に響きました。
また、クリエイティブキャンプに参加したあたかやチームは、スクールでの取り組みをもとに具体的なプロダクト開発を進め、そのサンプルをデザイン経営フェスの場で展示。スクールで芽生えたアイデアが、フェスの場で実物として立ち現れた瞬間でもありました。現在はオンラインショップの改善と、新プロダクト用サイトの作成も検討中です。

④出張ラジオ収録「ふぉんふぉんラジオ スクールおつかれ!」

フェスにはユニークなコンテンツも加わりました。鯖江市河和田のシェアハウス発「ふぉんふぉんラジオ」が会場内に特設ブースを構え、出張収録を実施しました。「スクールおつかれ!」という言葉とともに始まった収録では、ゆるい雰囲気の中で参加者から本音がこぼれ、「参加して本当によかった」という声も直接聞くことができました。
真面目な話も、苦労話も、お茶の間にいるような感覚でアーカイブしていく。これまでなかなか残せなかった参加者の生の声を記録する、産地の「今」を刻む温かな時間となりました。
産地に、デザイン経営の文化を根付かせる

SOEが越前鯖江デザイン経営スクールの運営に関わってきたのは、産業観光だけが産地を続ける方法ではないという考えがあるからです。産地の事業者が自分たちの価値を言語化し、デザインの力でそれを届けられるようになること。それは産地の産業そのものを強くすることにつながります。
3年間で延べ713名が参加し、スクールをきっかけに動き続けるプロジェクトは11チーム。クリエイティブキャンプやフェスという新たな試みを経て、この地域に「デザインの視点」を持つ仲間が着実に増えています。デザイン経営フェスはその集大成であり、産地に新しい文化の種を蒔いた場所でもありました。